a と the について考えます。
This is a pen. (不定冠詞 + 可算名詞)
This is the pen. (定冠詞 + 可算名詞)
a と the の違いは何でしょうか?
結論として当ブログでは次のように考えます。
a pen : a は「具体」を表わす
→ 「話し手」と「聞き手」が共通のpen を想像することができない
the pen : the は「抽象」を表わす
→ 「話し手」と「聞き手」が共通のpen を想像することができる
では説明します。
まず the はなぜ「抽象」を表わすのでしょうか?
a > the (具体の度合い)
a < the (抽象の度合い)
それは the の語源を知るとわかります。
池上嘉彦 『英語の感覚・日本語の感覚 <ことばの意味>のしくみ』 日本放送出版会、2006年によると以下のような説明があります。
接続詞の that と定冠詞 the は、いずれももともと指示代名詞の that に由来するもので、起源は同じである。つまり、節を導く接続詞の that は句を導く定冠詞の the と同じ働きをしているというわけである。(P90)
つまり the の語源は that なのです。
指示代名詞 that 「具体」
→ 接続詞 that (節を導く) 「抽象」
→ 定冠詞 the (句を導く) 「抽象」
指示代名詞 that の機能が「拡張」された結果、接続詞 that と定冠詞の the となったのです。
ではなぜ拡張された接続詞 that や定冠詞 the は「抽象」を表わすのしょうか?
【関係代名詞】2のところで説明した内容を引用します。
「具体」: 「こっちの世界」
現実世界(リアルな空間)
目で見る世界
→ this, it, that, they, these, those (指示代名詞)
「抽象」: 「あっちの世界」
想像世界(バーチャルな空間)
頭で考える世界
→ that (接続詞)
→ the (定冠詞)
指示代名詞はもともと比較的近くにあるものを指で差し示して、「これ」「それ」「あれ」「それら」「これら」「あれら」を意味する単語です。これらは「具体」的なものを指し示しています。they, these, thoseなどの複数形があることからも数えることができる(可算である)「具体」を表わしていることがわかります。
一方、これらの指示代名詞の中で唯一、「あれ」(that)だけは、現実と距離感がある「あっちの世界」(「抽象」)も表すことができます。
・「そうそう、あのことだけどねえ。」 (自然)
・「そうそう、このことだけどねえ。」 △ (ちょっと不自然)
想い出したように別の話題をふる時、「あのこと」と表現するほうが自然に感じられると思います。そしてこの場合の「あれ」(that)は遠くの「頭で考える世界」(「抽象」)を指し示していると思われます。(「あのことだけどねえ」と言う際、目はどこか遠く上の方を向いている感じがするのではないでしょうか。)
以上が the が「抽象」を表わすことができる理由です。
最後に、a pen は「新出」を表わし、the pen は「既出」を表わすとよく言われますが、これは次のように説明できます。
a pen : a は「具体」を表わす
→ 「話し手」と「聞き手」が共通のpen を想像することができない
→ 「新出」を表わす
the pen : the は「抽象」を表わす
→ 「話し手」と「聞き手」が共通のpen を想像することができる
→ 「既出」を表わす
話し手は pen の想像を頭ですることができるの対して聞き手はそれを想像できない場合には「a pen」となり、話し手も聞き手も両方 pen の共通した想像ができる場合には「the pen」となります。
the は「その」と訳すことばあると思いますが、正しい解釈は「あの」です。話し手と聞き手が頭の中で同じもの想像することができていることを表わしています。
最後に補足です。
pen を含めた名詞句の相対的な具体度・抽象度は以下のようになります。
a pen > the pen > pen (抽象名詞の場合) : 「具体」の度合い
a pen < the pen < pen (抽象名詞の場合) : 「抽象」の度合い
以上が a と the の違いについての「具体」と「抽象」による解釈となります。
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