2012年8月30日木曜日

【不定詞】2


 to不定詞の「to」について考えていきます。


    to不定詞  +  動詞の原形


 toには同じ形の前置詞があります。「~へ」などを意味しますが、これは何を指しているのでしょうか?もちろん、場所や方向などでです。

 では、不定詞のtoは何を指しているのでしょうか?これは、話し手の「想像の世界」を指し示していると当ブログでは考えます。話し手のイメージという抽象世界へのいざないを指し示すtoです。いわば、抽象世界がここからはじまるという案内標識です。

 ところで、「原形不定詞」という用語が参考書にあります。これは、本来、to不定詞をつけるべきところをto不定詞を省略して、動詞の原形のみの形となっているものです。例えば、助動詞+動詞の原形では、実は、to不定詞が省略されているのです。


       I will (to) play basketball with him tomorrow.

   助動詞+動詞の原形= 助動詞+(to不定詞)+動詞の原形

   *省略されたto不定詞を原形不定詞といいます。


 このことは次のことを指し示しています。つまり、動詞の原形は想像という「抽象」を表しますが、事実という「具体」を表わす現在形と区別するため、動詞の原形の前に「to」を置くことになっている、ということです。

 実際には、助動詞の後のこのto不定詞はいつも省略されますが、通常の不定詞ではtoは省略されることはありません。いずれにせよ重要なことは、動詞の原形の前には必ずtoがあり、このtoによって、動詞の原形が「抽象」を表わしていることがわかる、ということです。


  (to不定詞) + 動詞の原形 → 「抽象」を表す

 
 次に不定詞の用法について考えていきます。


2012年8月28日火曜日

【不定詞】1


 不定詞とは何でしょうか?

 定まらない品詞という命名ですが、そんなことはありません。用法は定まっています。

 
    to不定詞  +  動詞の原形


 形でのポイントは2つあります。1つは、「to」とは何か、2つめは、動詞の「原形」とは何か、です。

 まず、動詞の「原形」から考えていきましょう。


   動詞の現在形 : 「具体」を表す  →  事実を表す (三単現のSをつける)
   
   動詞の「原形」 : 「抽象」を表す  → 想像を表す (三単現のSをつけない)

   *三単現とは「三人称・単数・現在」のことです。

      He lives in Kyoto.

      He wants to live in Kyoto.


 どんな時制でも、どんな主語でも、受動態と完了形をのぞけば、to不定詞の後の動詞は、いつでも同じ形、すなわち、動詞の一番基本的な形である「原形」、となります。

 ところで、動詞の原形は何も不定詞の後にだけ使用されているわけではありません。助動詞の後でも使われています。そこで、なぜ助動詞の後では、動詞を「原形」とするのか、を考えたいと思います。


     I will play basketball with him tomorrow

  助動詞 + 動詞の原形 = 「抽象」 + 「抽象」 → 想像を表す 


 助動詞は「抽象」的な「想像」を表しますが、これは、具体的な事実を述べるのではなく、あくまで、話し手の想像という「抽象的な世界」でのことがらを述べる表現です。そして、「想像」とは、これからについての推測、つまり、「未来」について述べる表現です。英語には過去形のような形が定まった未来形というものはなく、助動詞などを利用して、未来を、話し手の推測という形で表わします。

 さて、この「抽象世界」では、動詞部分が表わす動作も、もちろん、話し手の想像となります。

 例えば、「play」の原形の意味を考えてみましょう。「抽象世界」でのplayとは、話し手がイメージするplayを意味します。目的語がbasketballであれば、話し手がイメージするバスケットボール「をする」、という意味です。

 では、そのような話し手のイメージを表す動詞がなぜ「原形」という形をとるのでしょうか?それは、想像という「抽象」を表すため、事実という「具体」を表わす現在形と区別しようとしたから、と当ブログでは考えます。現在形とほとんど同じ形ではないかと思われるかもしれませんが、完了・受動態を除けば、「いつでも同じ形」、という点が明確に異なるのです。(現在形のように、三単現のSがつかない。)

 そして、もうひとつ、助動詞の後の動詞の原形が、現在形とは決定的に形が異なる点があります。それは、助動詞の後には実は「to」不定詞が省略されている、というものです。

 では次に「to」とは何か、ついて考えていきましょう。


2012年8月26日日曜日

【動名詞】


 動名詞について考えたいと思います。


   Playing basketball is fun.                     (主語)

   My dream is going to America.             (補語)
   
    I am afraid of being late for school.   (前置詞の目的語)

    I gave up smoking.              (動詞の目的語)


 さて、ここで注目したいのは、動詞の目的語 です。

 動名詞を目的語にとる代表的な動詞を、次のような語呂合わせで覚えることがあります。


  メガフェプス(megafeps/各単語の最初のアルファベットをつなぎあわせた造語)

  mind/enjoy/give up/admit/finish/escape/put off/stop  + 動名詞


 これを理解するには、逆に、なぜ不定詞( to + 動詞の原形)をとらないのか、を考え、両者を比較したほうがわかりやすいと思います。不定詞は名詞としても使用することができますので、動名詞と同様に、動詞の目的語となることができます。


     I remember playing basketball with him yesterday.    「私は、昨日、彼とバスケをしたことを覚えている。」 

     I remember to play basketball with him tomorrow.    「私は、明日、彼とバスケをすることを覚えている。」


     動名詞: 動作の一場面を想像 → ちょっと前の「過去」への想像 (抽象)

    不定詞: これからすることを想像 → 「未来」への想像 (抽象)


 動名詞は、目の前の動作の一場面を切り取り想像する、ことから、基本的には「現在」のことを表すように見えますが、厳密にはそうではありません。目の前の動作の一場面を切り取るという抽象的な想像という行為は、厳密には、「ちょっと前の過去」の動作の一場面を切り取る、ということであり、「過去」を表すものです。(ちょっと前の過去、という意味では、ほぼ「現在」を表す、ととらえても問題ないと思われます。)

 では、動名詞は、「未来」を表すことができるでしょうか?答えはNOです。まだ行われていない動作を表すことができるのは不定詞です。

 以上のことから、メガフェプス という動名詞しかとらない動詞の特徴は、ちょっと前の過去の動作の一場面を想像して、それを~する、という意味の動詞、ということになります。


【現在分詞】


 現在分詞の使い方について考えたいと思います。

  
    現在分詞(ing)  : 動作の一場面を表す (抽象)

 
 現在分詞は、過去分詞と同様に、「形容詞」(句)としても使用することができます。


    a waiting room

   Tom is the boy playing basketball over there now.

 
 そして、現在分詞を「名詞」(句)として使用することもできます。これがいわゆる「動名詞」です。


   Playing basketball is fun.   : 現在分詞の名詞的用法=動名詞


 ちなみに、過去分詞には名詞的用法はありません。

 さて、この動名詞という名詞は、通常、数える(可算にする)でしょうか?

 答えはNOです。不可算です。なぜでしょうか?

 理由は、現在分詞は、止まるはずのない目の前の時間の流れを止めて、ある一場面だけを想像するという「抽象」を表しているからです。つまり現在分詞は、「抽象」名詞であるため、不可算・無冠詞にするのです。(ただし、話し手がをある動名詞を「具体」的なものとして考える場合は、可算・冠詞あり、とすることももちろんできますが、あまりありません。)

では、なぜ現在分詞を名詞として使用することができるのでしょうか?

それは、現在分詞が、動作の中から「一場面」だけを切り出しているからです。写真をとるように、ある動きの中から1つのシーンだけにフォーカスしています。撮られた写真は、1つの「動作」として、名詞的に扱うことができるのです。

最後に、現在分詞の用法をまとめると次のとおりになります。

 
  現在分詞(ing) 
 
  ①be動詞とともに進行形(動詞句)のはたらき  : 現在分詞の動詞的用法
  ②形容詞(句)のはたらき                          : 現在分詞の形容詞的用法
  ③名詞(句)のはたらき                          : 現在分詞の名詞的用法=動名詞


 次に、動名詞について考えたいと思います。    

【進行形にしない(しにくい)動詞】


 進行形にしない(しにくい)動詞があります。


   know,have,love,hope,want,wish,remember,forget,understand,など

    I am knowing you now. (X)


 「3秒間~する」ことができない動詞は進行形にはできない、という説明がありますが、まさにそのとおりです。要は、時間の流れの中から一場面だけを切り取って想像することがしにくい動詞のことです。

 では、時間の流れの中から一場面だけを切り取って想像することがしやすい動詞との違いは何でしょう?

 それは、「境界」がはっきりしている、ということです。「する」と「しない」の境界を明確に区別できるかどうかです。


  I am studying English now.  → 「勉強する」と「勉強しない」の境界がはっきりしている → 進行形にできる

  I am knowing you now. (X) → 「知っている」と「知らない」の境界がはっきりしていない → 進行形にしない(しにくい)


 境界がはっきりしている動詞は、「動作」を表す動詞です。「動き」は「する」と「しない」の境界がはっきりしているため、一場面を切り出しやすいのです。

 また、「動作」を表す動詞には、動きに変化があるため、一場面を切り出して描写しやすいのです。

 よく、スポ-ツのある一場面を写真にとりますね。スポーツは場面ごとの動き(顔の表情や体の動作など)が違うため、写真だからこそ描写できるものがあると思います。だから、do,play, practiceなどは進行形にしやすいのです。

 一方、これといった動きをともなわない「知っている」という状態は、動作に比べて、写真に撮りにくいと思われます。だから、know などは進行形にしない(しにくい)のです。

 最後に、通常は進行形にはしない(しにくい)が、あえて進行形にすることによって、一種の強調の意味を表す用法もあります。

 
    I am loving you.


マクドナルドのテレビコマーシャルでありました。いつもとちょっと違うという感じが表現されてますね。


【現在進行形】


 現在進行形とは何ででしょうか?

 
   現在進行形: be動詞 + 現在分詞 (ing)


 現在分詞が使われていることに注目しましょう。現在分詞も「抽象」を表します。

  
    現在形  : 具体を表す

    現在進行形 : 抽象を表す

 
 では、なぜ現在進行形は抽象を表すのでしょうか?


   I study English every day.       現在形

     I am studying English now.    現在進行形


 現在形は、「習慣」や「不変の事実」を表すとよくいわれますが、この場合、「英語を勉強する」ということが、目の前の時間の流れの中で周期的(毎日)に繰り返されていることを表しています。

 毎日太陽は東から昇る、毎週ドライブに行く、毎月給料をもらう、毎年ハワイに行くなど、どれも現在形で表わしますが、これは目の前の時間の流れの中で周期的に繰り返される事柄であり、その事柄を英語は「具体的」な「事実」としてとらえています。

 一方、現在進行形は、このような時間の周期的な流れを表していません。「今、英語を勉強している」は、時間の一点・一部分だけを表しています。いわば、時間の流れの中から、一定時間だけを抜き出しているのです。

 現在進行形は、数学にたとえると、時間を「微分」しています。時間を止めて、その一点の動きだけを分析しています。また、写真をとってある一場面だけを描写する感じでもあります。

 現実には、時間を止めることはできません。止められない時間をあたかも止めて、特定の場面の事柄だけを、時間の流れの中から切り取ることは、「想像」の領域です。つまり、「抽象」の世界です。過去形が、過ぎ去った過去への想像という抽象表現であるように、現在進行形は、止まるはずのない目の前の時間の流れを止めて、ある一場面だけを想像する、という「抽象的」な「想像」なのです。


  現在形 : 目の前の時間の流れの中の周期的に繰り返される事実を表す (具体)

  現在進行形 : 目の前の時間を止めて一場面だけをぬきだす (抽象)


 「具体」を表す現在形の形と、「抽象」を表す現在進行形の形が区別されていることに注目しましょう。
 

2012年8月20日月曜日

【過去分詞】

 
 過去分詞とは何でしょうか?

 本ブログでは、過去分詞を「第二抽象形」と呼びたいと思います。

  
    現在形 < 過去形 < 過去分詞形  (抽象度)


 過去形(第一抽象形)より、過去分詞形はさらにもう一段階抽象度が高い(第二抽象形)ことを表しています。

 では、受動態と完了形で利用されているこの過去分詞には、何か共通する概念があるのでしょうか?

 本ブログでは共通の概念があると考え、仮説としてそれを「逆転」という概念だと考えます。

 
    【受動態】 (be動詞 +過去分詞)

    → 主語と目的語を「逆転」させている 

      (主観を客観に「逆転」させている)


    【現在完了形】 (have + 過去分詞) 

    → 時間の目線を「逆転」させている 

      (現在→過去を、現在→過去→現在へと「逆転」させている)
  

 現在完了形の「時間への目線を逆転させている」というのは、過去形が「現在→過去」という目線であるのに対し、過去分詞は、その目線を過去の時点でUターン(逆転)させて、現在→過去→現在としている、という意味です。

 「逆転」させることで抽象度が高くなっていることに注意しましょう。主観よりも客観のほうが、また、「現在→過去」よりも「現在→過去→現在」のほうが、話し手の想像が拡張されているため、抽象度が高くなっています。より抽象度が高いからこそ、それを形で表わすため「過去分詞形」ができた、と考えられます。

 この仮説に基づくと、「逆転」という概念をもつ過去分詞は、結果として「受動」と「完了」の意味をもつ、ということになります。


   【過去分詞】の意味 
  
   ①受動 (~された)
   ②完了 (~した)


 最後に、過去分詞はbe動詞やhaveから独立して、形容詞(句)としても利用できます。


   My bag was stolen.      →  my stolen bag

     I have retired from the army as a solder.  → a retired soldier


   【過去分詞】の働き

   ①動詞的用法(受動態と完了形をつくる)
   ②形容詞的用法


2012年8月19日日曜日

【受動態】


 能動態とは「~する」 であり、受動態とは「~される」です。

 そして、この区別も、具体と抽象の区別で説明がつきます。

  
   能動態: ~する    主観 = 具体   

   受動態: ~される   客観 = 抽象  


 客観はなぜ抽象なのでしょうか?それは主観に比べて客観は、「距離」が大きい(離れている)からです。「~される」は「~する」に比べ、一歩引いて状況をみています。この距離の大きさは丁寧表現で利用されている距離と、抽象度を高めている、という点で同じものです。

 また、主観を客観に逆転させているということは、話し手の想像が拡張されているため、客観のほうが主観よりも抽象度が高くなります。

 抽象を表す受動態の形が、具体を表す能動態と区別されているは当然ですが、ここではその形に注目したいと思います。


    He opens the door.               : 能動態

      The door is opened by him.     : 受動態  → 「be動詞 + 過去分詞」  


 受動態の形の「be動詞」の部分は、get、lie などの一般動詞でも置き換えることができます。

 注目したいのは「過去分詞」が使われていることです。完了形にも「過去分詞」が使われています。

 では過去分詞とは何でしょうか?

 次にそのことを考えていきたいと思います。

【完了形】


 完了形は日本語にはない英語独特の形です。

 これも、英語が具体と抽象を形で区別しているから、独特の形となるのです。


   I study English.                   : study (現在形): 現在のみ

     I have studied English for three years.  : have + 過去分詞(現在完了形): 現在+過去 

   現在: 目の前の出来事を目で見る → 事実の世界 → 「具体」の世界

   過去: 過ぎ去った出来事を頭の中で想像する → 空想の世界 → 「抽象」の世界


 現在完了形には、抽象を表す過去分詞が使われています。現在形が目の前の具体的事実だけをみているのに対し、現在完了形は、過ぎ去った過去への想像と、目の前の具体的事実の両方をみており、両方を結びつけているのです。現在完了形は、抽象をともなう表現であるため、具体を表す現在形とは区別された形をとっています。

 よく完了形には、4つの意味があると参考書に書かれています。完了・結果・経験・継続です。これは次のように整理することができます。


   現在完了: 現在 + 過去 → 過去と現在を結びつけている → 「過去 ⇒ 現在」 
   
   過去と現在の結びつけ方の4つの解釈

     ある一定期間に何かをした     → 終わっていることに注目        → 完了 → ~してしまった
    ある一定期間に何かをした   → まだ終わっていないことに注目 → 結果 → ~した(そして今も~だ)
    ある一定期間に何かをした   →  回数に注目             →  経験 → ~したことがある
    ある一定期間に何かをした    → 今も続いていることに注目     →  継続 → ずっと~している 
   
 
 結果と継続は同じように思えるのですが、重要なことは、これは結果だ、これは継続だ、というように分類することではなく、文脈に応じて適切な意味をつかむことです。その際助けとなるのは、いっしょに使われる頻度が高い次のような語句を手がかりにすることです。
 
  
   完了 (~してしまった)    → just (もう), already (すでに), yet (まだ)
   経験 (~したことがある) → once(1回), twice(2回), ~times (~回)
   継続(ずっと~している)  → since(~から), for(~の間)   


 結果にはよくいっしょに使われる語句は特にないように思われます。

 最後に次の点をまとめておわりにします。考え方は現在完了形と同じです。


   過去完了: 過去+さらに過去(大過去) → 過去と大過去を結びつけている → 「大過去⇒過去」 

   未来完了: 現在+未来(これからのこと) → 現在と未来を結びつけている → 「現在⇒未来」

   *「未来」は助動詞を利用して表します。


2012年8月18日土曜日

【なぜ副詞節の中では動詞は現在形なのか】


 英語の参考書には次のルールが必ずのっています。

 「時と条件を表す副詞節の中では、未来形ではなく、現在形を使わなければならない。」


     1. If it rains this weekend,  the game will be put off.


 rains の形は will rain は誤りで、 rains が正しいというものです。

 しかしこれは不思議です。

 なぜなら、「週末」という未来のことを話しているのに、未来形ではなく現在形を使っっているからです。

 これはなぜでしょうか?

 「具体」と「抽象」という視点で次のように説明することができます。

 まず、1の文は次のような推論の構造をもっています。

  
    If it rains this weekend,   →   the game will be put off.

    もしこうなら           →     こうなるだろう

    前提 (副詞節)        →    仮説 (主節)


 そして、この推論の構造は「帰納法」が使われています。


   【帰納法】 

   : 個々の具体的事実から、仮説を立てる推論の方法

     「事実」(具体)   →   仮説 (抽象)

     *前提を「事実」としてとらえている


 最後に、英語は「事実」を「現在形」で表わしますから、1の文は次のようになります。


    If it rains this weekend,   →   the game will be put off.

    もしこうなら           →     こうなるだろう

    前提 (副詞節)        →    仮説 (主節)
   
    「事実」 (「具体」)       →     仮説 (「抽象」)

    =「現在形」

    *英語は具体的事実を現在形で表わす


 以上をまとめると次のようになります。


 「時と条件を表す副詞節の中では、未来形ではなく現在形を使わなければならない」

 → 帰納法を使っており、話し手は前提を具体的「事実」として認識しており、具体的「事実」は「現在形」で表わされるから


 最後に補足です。

 前提の具体的「事実」はあくまで話し手の主観的な「事実」です。

 もし話し手が主観的に「事実」と認識していなければ、当然「現在形」は使いません。

 この場合、助動詞を使って未来を表わします。


    2. I’ll try it if you will help me.  


【丁寧表現】


 英語の丁寧表現について考えます。


      Will you open the window ?    (窓を開けてくれませんか?)
   
      Would you open the window ?    (窓を開けていただけませんか?)
 
 
 2番目の文のほうが1番目の文よりも「丁寧」な言い方となります。なぜでしょうか?

 まず、2番目の文のほうが1番目の文よりも「抽象」の度合いが高い表現です。なぜならば、1番目の文は助動詞の現在形が使われているので対して、2番目の文では助動詞の過去形が使われているからです。ちなみに、この過去形は「~でした」という意味・訳し方ではなく、過去形という抽象度が現在形よりも高い言い方を利用して、推測・仮説の度合いが高いことを表しています。

 抽象の度合いが高くなればなるほど、推測・仮説の度合いが高くなりますが、これは実現の度合いが低くなっていくことを意味しています。

 この推測・仮説の度合いが高くなる、実現の度合いが低くなる、ということは、現実と仮説との「距離」が大きくなっていく、ことを意味しています。

 そして、英語の「丁寧」表現はこの「距離」の大きさを利用します。すなわち、現実と仮説との距離が大きくなればなるほど、それだけますます「丁寧度」は高くなっていくのです。

 だから、助動詞の過去形というより抽象を表す形を利用した2番目の文のほうが、助動詞の現在形を使った1番目の文よりも、現実と仮説との距離がより大きいため、より丁寧な表現となるのです。

 日本語にも次のような例があります。


    ~でいいでしょうか?

    ~でよかったでしょうか?


 2番目の文のほうが、最初の文よりも丁寧だと感じるのではないでしょうか?英語と同様、2番目は過去形を使っていますが、過去のことを表しているわけではありません。過去形という抽象度が現在形よりも高い言い方を利用して、現実との「距離」を大きくすることによって、丁寧度を高めているのです。

 以上のように、日本語も英語も、丁寧表現は同じしくみだと考えれます。


【助動詞】


 助動詞とは何でしょうか?

 動詞を助ける品詞で、動詞の前に置かれ、原形と過去形があります。また、助動詞のあとにくる動詞は、三単元のSや過去形でなく原形がきます。そして、その動詞の原形とセットとなって、助動詞のかたまりは「抽象」を表します。

 
   助動詞の原形・過去形 + 動詞の原形 = 「抽象」 = 推測を表す

     1. He will go to school this Sunday. 

     2. He would go to school this Sunday.


 1、2の文とも共通している点は、何らかの根拠(体育祭がある等)に基いて、彼は今週の日曜日に学校へ行くだろうと話し手が推測しているという点です。

 しかし、1,2の文が異なる点は、推測の度合いです。つまり、1の文よりも2の文のようが推測の度合いが高い(=実現の度合いが低い)ことを表しています。助動詞の原形よりも助動詞の過去形のほうが「抽象度」が高くなるため、その結果、推測の度合いが高く(=実現の度合いが低く)なるのです。


   3.  He goes to school this Sunday.


 3の文は、話し手が何らかの根拠に基づき、彼は今週日曜日に学校へ100%行くと、事実としてとらえている感じになります。動詞の現在形は具体(事実)を表すからです。

 ところで、助動詞にはいろいろな種類があります。ではそれぞれどう違うのでしょうか?


   must > will > can > may > would > could > might    (抽象・推測の度合い)

     動詞の現在形: 100%  (事実)(具体)

   助動詞の原形・過去形+動詞の原形: (推測)(抽象)
   must      90%  
     will       70%
     can       60%
   may     50%
   would    40%
   could    30%
   might    20%

    *数字は実現の度合いを表しています。


 という感じになるのではないでしょうか。もちろん、willやcanそれ自体のニュアンスもあるため(例:canは可能を表す)いちがいには比較できないかもしれませんが、話し手の感じる抽象の度合いに応じて使う助動詞が変わってくるのです。

 最後に確認です。助動詞の過去形は何を表しているのでしょうか?

 答えは、助動詞の過去形は「過去」を表わしているのではなく、「抽象」(推測)の度合いが高いことを表しています。ですから訳し方は「~でした」ではなく、「~だろう」となります。willよりもwouldのほうが、canよりもcouldのほうが抽象度が高いため、推測の度合いが高く、実現の可能性が低いことを表しています。

   
   would   >   will        (抽象・推測の度合い)
     could   >  can


【未来形】


 英語には、過去形が動詞にedをつけるように、「未来形」という形はあるのでしょうか?

 答えはNOです。そのため、英語は未来を推測・想像という「抽象」を表す助動詞などを利用して表現します。


   未来形: 「抽象」の世界 → 推測(想像)で表わす → 助動詞などを利用

    I will go home at eight tomorrow.

      I would like to write a book on English.


 では、なぜ同じように抽象を表す未来形と過去形とで違う形をしているのでしょうか?

 それは、同じ抽象の世界であっても、抽象の度合いが異なるから、違う形をとっているのです。


    現在 > 過去 > 未来  (具体の度合い)

     現在 < 過去 < 未来  (抽象の度合い)

 
 では、過去はどうして未来よりも具体度が高い(抽象度が低い)のでしょうか?

 それは、過去は、すでに存在した事柄であるのに対して、未来は、まだ何も存在していない事柄であるからです。

 そもそも、どうして未来形には過去形のような形(動詞にedをつける等)がないのでしょうか?

 それは、英語は、わざわざ「未来形」という形をつくる必要はなく、未来は「推測・想像」の抽象世界であるから、「推測・想像」を表す表現を使えばそれで代用できると考えているからだと思われます。

 最後に、未来の表わし方のまとめです。


   未来の表わし方

   ①推測を表す助動詞 will/can/may/would/could/might/should + 動詞の原形

   ただし、次のような表わし方もあります。

   ②現在形 (話し手が事実として100%起ると考えている場合)
   ③現在進行形 (be going to + 動詞の原形)(未来へ向けて進んでいる感じ)


 次に、助動詞についてみていきましょう。


2012年8月17日金曜日

【過去形】


    He lives in Kyoto.  (現在形)

    He lived in Kyoto. (過去形)


 現在形は、現在の具体的事実を表しますが、では過去形も過去の具体的事実を表すのでしょうか?答えはNOです。


   過去形: 「抽象」を表す形


 では、なぜそうなるのでしょうか?
 
 手がかりは「目で見る」か、「頭の中で想像する」か、です。


   現在: 目の前の出来事を目で見る → 事実の世界 → 「具体」

   過去: 過ぎ去った出来事を頭の中で想像する → 仮説の世界 → 「抽象」


 過去の出来事は、現在にいる話し手にとってもはや目で見ることができないため、頭の中で想像しなければなりません。そのため、仮説という「抽象」を表す過去形と、事実という「具体」を表す現在形とでは、形が区別されているのです。


   He lives in Kyoto.  彼は京都に住んでいる。(と話し手は目の前で見ている。)

   He lived in Kyoto. 彼は京都に住んでいた。(と話し手は頭の中で想像する。)



2012年8月16日木曜日

【現在形】


「具体」と「抽象」の区別という視点で、時制について考えていきます。

 現在形とは、以下のようにとらえることができます。


    現在形: 「目の前にある具体的な事実」を表す


 つまり、現在とは「具体的な事実」を表し、現在形とは「具体的な事実を表すための形」です。

 よく、英文法の参考書に、現在形は「現在の状態」・「習慣」・「不変の事実」・「近い未来の予定」を表す、と書かれていますが、要するに「具体的な事実を表す」とまとめるができます。


    The sun goes down in the west.

    She has blue eyes.

    I leave home at eight this weekend.


 これらは、ずべて「具体的な事実」を表しています。

 ちなみに、最後の文は「未来」を表しているのではないかと思われるかもしれませんが、話し手が、週末8時に出かけるということを主観的な「事実」としてとらえているため、現在形が使われているのです。したがって、事実として100%起ると話し手が考えている場合は、未来を現在形で表わすことができるのです。

 以上のように、「現在」とは、目の前にある具体的な事実(客観的な事実だけでなく、主観的な事実)を表すのです。つまり「具体」です。

 一方、「過去」や「未来」は、頭の中で抽象的に思考する仮説や推測の世界、つまり「抽象」なのです。


2012年8月15日水曜日

【可算・不可算】


 可算・不可算について考えてみたいと思います。

 可算は、Countable (数えることができる)、不可算は、Uncountable (数えられない)です。

 これを、「具体と抽象」という視点でとらえると、以下のようになります。


    可算: (具体的にとらえているから)(対象を)数えることができる

    不可算: (抽象的にとらえているから)(対象を)数えることができない

 
 このことは次のように言いかえることができます。


    可算: 数えることによって、対象を具体的にとらえる

    不可算: 数えないことによって、対象を抽象的にとらえる


 名詞は、最初から可算・不可算という形をもっているのではなく、話し手が、その名詞を具体的にとらえるか、抽象的にとらえるかによって、 可算 ・不可算の形をとるのです。

 PAPER を、具体的な紙、たとえば、書類としてとらえていれば、a paper/papers という可算の形にするし、PAPERを、抽象的な紙、たとえば、紙一般としてとらえていれば、paper という不可算の形にする、ということです。


2012年8月14日火曜日

【語彙】


 「PAPER」という単語について考えてみます。

 不可算で無冠詞のPAPERは、「抽象的」な紙を意味しています。

  
    (抽象)PAPER : 紙 (紙全般、紙の集合を表す)(不可算、無冠詞)

     He cut paper into pieces.

  
 一方、 可算 (数える・冠詞あり)のPAPERは、「具体的」な紙を表しています。


    (具体)PAPER : 新聞・論文・書類など ( 可算 ・冠詞あり)

       I read a morning paper every day.          (新聞)

       I handed in a paper about English grammar.     (論文)


 以上のように、抽象的にとらえるか、具体的にとらえるかによって単語の形と意味が変わります。

 ちなみに、抽象的な紙一般を表すPAPERを数えるには、そのままでは無理ですので、"PIECE"(1つのもの)や"SHEET"(1枚の紙)という、具体的なものを表す単語を利用します。


    a piece of paper

     three sheets of paper


2012年8月13日月曜日

【具体と抽象の区別】


 「具体と抽象を形で区別する」とはどういうことでしょうか?

 例をいくつか見ていきましょう。

 まず、名詞の形です。


   名詞を具体的にとらえている場合 → 数える(可算)、冠詞をつける

   名詞を抽象的にとらえている場合 → 数えない(不可算)、無冠詞


 英語は、数にこだわるなあと感じた人は多いと思います。これは英語が数にうるさいからというよりも、具体的なことと抽象的なことを区別するのにうるさいからなのです。

 次に、動詞の形です。


   動詞を具体的にとらえている場合 → 現在形

   動詞を抽象的にとらえている場合 → 過去形・完了形・原形・不定詞


 英語は、時制にこだわるなあだと感じた人も多いと思います。これも英語が時制にうるさいからというよりも、具体的なことと抽象的なことを区別するのにうるさいからなのです。


 また、能動態・受動態の区別もあります。

   
   動詞を具体的にとらえている場合 → 能動態

   動詞を抽象的にとらえている場合 → 受動態


 ただし、能動態の場合でも、過去形の能動態、完了形の能動態、不定詞の能動態等は、「抽象」を表します。

 以上のように、英語はいつも具体と抽象を形で区別しています。

 では、「具体」・「抽象」とは何でしょうか?


     「具体」: 目の前にある事柄 = 「事実」 (客観的事実+主観的事実)

     「抽象」: 頭の中で想像する事柄 = 「推測・仮説」


 事実と推測・仮説の区別は話し手が決めることができます。話し手が「事実」であるととらえれば「具体」の形を使うし、「仮説・推測」であるととらえれば「抽象」の形を使うのです。したがって、科学的事実のような客観的事実だけでなく、主観的事実も「具体」で表現するのです。
  

【はじめに】


 このブログは、英文法を少しでもわかりやすく理解するための一つの仮説を提案します。

 それは、


    「具体」 と 「抽象」 を 「形」 で 区別する


 という仮説的な方法です。

 というのも、英語は次のような注目すべき特徴をもっているからです。


    英語の特徴: いつも「具体」と「抽象」を「形」で区別しようとする


 具体を表す場合は具体の形を、抽象を表す場合は抽象の形を英語は必ずとります。

 この区別に敏感になると、英語力は飛躍的にUPすると考えています。